高山正さん(第3期・卒業生)
整備士から農の世界へ—— 丹波移住のきっかけとなった奥さまとの出会い
丹波ののどかな風景の中で、軽やかな手つきで大型農機具を操るのは、高山さん(神奈川県出身)。 かつて横浜で整備士として働いていた彼が農の道に進んだきっかけは、“奥さまとの出会い”にあった。
結婚を機に整備士の仕事を辞め、「これからどうしようか」と思っていた頃。
奥さまが「地元に帰りたい」と手にした新聞には『農の学校』の文字があった。
「田舎暮らしに憧れはあったけど、友達がいない環境に飛び込むのは不安でした。
でも“学校に入れば仲間ができるかもしれない”と思ったんです。」
実は農業への興味は後からついてきたもの。
しかし、一度農業の世界にふれてみると整備士の経験が驚くほど活きた。
播種の効率を上げるための道具を手作りしたり、農機トラブルの際には頼られる存在になったり。
「気づけば、自分の役割は機械にまつわる部分ばかりでしたね」と笑う。

—— 卒業後の道:大規模農家法人での挑戦
農の学校を卒業後、在学中からアルバイトしていた株式会社 山茂へ雇用就農。今年で5年目になる。
山茂は、丹波市でも有数の大規模農業法人。
米だけで20町、ほかにも丹波栗・大根・玉ねぎ・芋・大豆など多品目を栽培しており、その分扱う機械も多種多様だ。
「他では見ないような大型農機具を扱えるのは楽しいですね。今ではほとんどの機械を任せてもらえるようになりました。」
整備士としての経験と、農の学校で得たつながり。
その両方が、いまの“欠かせない存在”としての高山さんを形づくっている。
個人圃場は現在米6反、小豆1.5反。
週末には“遊び心”で好きな野菜を育てる程度だが、将来は必ず独立したいと考えている。
「有機栽培で米を主力に、黒大豆と小豆を柱にした農業をしたいです。
地域でも、田んぼを管理できなくなっていく家が増えているので…。
大型機械を扱える自分の経験をいかして、地域の農地を守りたいですね。」
農業の現場で積んできた確かな技術が、地域の未来を支える原動力になっている。
「自分の育てた作物が食卓に並ぶって…本当に神秘的ですよね。」
地域で暮らし、土を耕し、家族と笑う。
その日々こそが、これからも守りたい未来だと語ってくれた。