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5期_清水聡志さん

清水聡志さん(第5期・卒業生)

「在来野菜の物語を次の世代へ」ー 旅好きの青年が選んだ、丹波での学びと暮らし

子どものころ、近所の畑で働く人たちの姿に憧れたという清水さん(京都府出身)。
「土に触れて、笑顔のもとを作る仕事がしたい」——その思いは大人になっても消えず、IT系の仕事を続けながらも、いつか農業に携わりたいと考えていました。

転機となったのは、偶然目にした「丹波市立 農(みのり)の学校」の存在です。もともと他県での就農を検討していたものの、話が進まず迷っていた時期でした。「見学で先生のオンライン講義を見せていただいたんです。農業を“勘と経験”ではなく“理論”で教えてくれることに驚きました。非農家出身でも理解しやすく、これなら挑戦できると思いました」と振り返ります。

入学後は、植物の生理や土壌環境といった科学的な知識を基礎から学び、農家さんの言葉の背景が理解できるようになったといいます。「以前なら“プロが言うのだから正しいんだろう”と思っていたことも、今は自分で納得したり疑問を持ったりできるようになりました。」

もう一つの転機は、在来野菜との出会いでした。移住者交流イベントをきっかけに、丹波の希少な在来品種「黒さや大納言小豆」を栽培する農家と出会い、その復活の物語に心を打たれたといいます。「絶滅しかけた小豆を地域の人たちが守り続けてきたことに感動しました。その想いを継ぎたいと思い、就農地もその地域に決め、家まで買いました。」

在学中は同級生と各地の農家を訪問し、さまざまな栽培方法や考え方に触れる中で、「農業には唯一の正解はない」ということを実感。「学校で学んだ理論が無意識のうちに固定観念になっていたこともありましたが、現場を見て考え方が柔らかくなりました」と語ります。

今後は、黒さや大納言小豆をはじめとした在来野菜や丹波栗などの栽培を続けながら、その魅力を発信していく予定です。「在来野菜は、地域の文化財です。それを次の世代に伝えると同時に、今の世代が楽しめる形でも広めたい。観光客向けに“在来野菜の食べ歩きツアー”なんかもやってみたいですね。」

旅好きだからこそ、地域をめぐる楽しさを誰かと共有したい。
清水さんの描く未来は、畑の中にとどまらず、丹波という土地全体を舞台に広がっています。